3月1日(日)やったそうだ焼肉屋で
2026年2月26日。名古屋・バンテリンドームの記者会見室で、爆笑が起きた。
鈴木誠也が「大谷会、やってください!」と懇願した。
大谷翔平は、うっすら笑みを浮かべながら、こう言った。
「まずは勝つことが大事だと思います。おいしいご飯を食べに行くわけではないので」
誠也が「なんか、すみません(笑)」と頭を掻く。会場は爆笑。
でも——。
この発言を聞いた人のほぼ全員が、笑いながらも「ですよねえ」と思ったはずなんです。なぜか。
それは、大谷翔平という人間の過去のエピソードを知っているから。
この人、ほんとうに「ご飯」に全くといっていいほど無頓着なんです。いや、無頓着というよりも——「食べ物を、燃料としか見ていない」と表現したほうが正確かもしれない。
今日は、今回の発言の"予告編"とも言えるストイックエピソードを集めながら、大谷翔平という生き物の謎に迫ってみたいと思います。

第一話:プロテインシェイカーに豆腐を入れた男
時は高校時代。花巻東高校。
同学年のチームメイト・小原大樹くんが目撃してしまったのは、衝撃の光景だった。
「プロテインシェイカーに豆腐を入れて、振っていた」
一瞬、何が起きているかわからない。
「タンパク質をとりたいので、プロテインに豆腐を入れたらもっと効率がいいでしょ」
……本人は大真面目である。
そしてさらに。揚げ物を食べるとき、大谷は衣を剥がして食べていたという。
「それカツじゃないだろ」と突っ込む小原くん。正論です。
でも大谷は「衣に意味はない」という鉄の信念のもと、中身だけを食べ続ける。
ここで私が面白いと思うのは、大谷がこれを「ストイックなこと」だと思っていない点なんですよね。本人的には「タンパク質を最大化するための、ごく自然な行動」なんです。それが周囲から見ると完全に宇宙人なわけで。
第二話:先輩の食事の誘いを、何度も断り続けた男
日本ハム時代の先輩が、こんな証言を残している。
「何度食事に誘っても、断られました。なんやかんや理由をつけたり、気乗りしなかったりとかで」
先輩選手からの食事のお誘いを断るって、普通どれだけ勇気がいることか。特に体育会気質の野球界ではなおさら。
でも大谷はそれを涼しい顔でやっていた。
理由はシンプルで——「練習したいから」。
この先輩は続けてこう語っている。
「翔平は野球だけですね。野球以外にやりたいのも野球って感じで」
「野球以外にやりたいのも野球」。
この一文、何度読んでも意味がわかりそうでわからなくなるんですけど、要するに「趣味も、息抜きも、余暇も、全部野球」ということで……これはもう人間の形をした野球そのものなんじゃないかという気がしてきます。
第三話:WBC前、食事メニューが「ゆで卵5〜6個・ブロッコリー・塩パスタ」だった男
2023年のWBC侍ジャパンのチームメイト・宇田川優希投手が、当時のメニューを暴露した。
試合前の大谷翔平の食事:
- ご飯(大盛り)
- ゆで卵 5〜6個
- ブロッコリー
- サラダ
- パスタ(塩のみ)
「何をおかずにして食べるんだろう……と思って」
宇田川くん、正直でいい。私も思った。
ゆで卵5〜6個をどうやって食べるのかがまずわからない。塩パスタって、それはご飯のおかずなのか主食なのか。ブロッコリーはどこの立場なのか。
でも大谷的には「全部タンパク質と炭水化物」というシンプルな分類で整理されているんでしょう。おいしいとか、楽しいとか、そういう軸は最初から存在していない。
「ご飯を食べに行くわけではない」——この言葉の意味が、じわじわと解像度を増してきませんか。

第四話:おにぎりと唐揚げを見つめながら「がまん」とつぶやいた男
実はこれ、個人的に一番好きなエピソードなんです。
大谷翔平は、甘いものが大好きです。クレープ、チョコレート、アイスクリーム。欲望はちゃんとある。人間なんです。
でも栄養管理の都合上、それを食べるわけにはいかない。
そこで大谷はどうするか。
おにぎりや唐揚げを見つめながら、小声で「がまん」とつぶやく。
これが目撃されている。
「がまん」という言葉を自分に言い聞かせながら、我慢する。
……もしかして、この人、相当辛いんじゃないか。という気もしてくるんですが、同時に、その「がまん」をずーっと続けて年俸1000億円超の選手になっているわけで。
「がまん」と「結果」が完全に直結している稀有な人間、それが大谷翔平なんでしょう。
第五話:他のメジャーリーガーが言った「1000億円もらっても大谷みたいな生活はできない」
これが全てを要約していると思う。
メジャーリーガーの同僚たちが、口を揃えて言ったのです。
「1000億円の契約を取れるとしても、大谷のような生活はできない」 「何が楽しいのかわからない」
超一流の選手たちから見ても、大谷のライフスタイルは「理解不能」なんです。
睡眠は10時間以上とる。外食はほぼしない。甘いものを見て「がまん」とつぶやく。先輩の誘いを断って練習する。食事はゆで卵5〜6個とブロッコリー。プロテインシェイカーに豆腐。
「何が楽しいのかわからない」というのは、ある意味最大の賛辞だと思うんです。なぜなら、「楽しさ」の定義が、他のすべての人間と根本的に違うから。
大谷にとって楽しいのは、野球で勝つこと。そのために最適化された生活が、「ご飯を食べに行くわけではない」という一言に集約されている。
結論:「ご飯を食べに行くわけではない」は、一言の自己紹介だった
2026年2月26日のあの発言、改めて聞くと、単なる決起集会の断り文句じゃないですよね。
あれは大谷翔平という人間の、人生哲学の凝縮です。
- プロテインシェイカーに豆腐を入れていた少年時代
- 先輩の食事の誘いを断り続けた日本ハム時代
- ゆで卵5〜6個とブロッコリーを黙々と食べたWBC
- おにぎりを見て「がまん」とつぶやく日々
- 他のメジャーリーガーが「理解できない」と言う生活
それら全部が、「ご飯を食べに行くわけではない」という一言に積み重なっている。
だから会場は笑った。でも、誰も「冷たい人だ」とは思わなかった。
なぜなら私たちは知っているから——この人が、ずっとそういう人だったことを。
笑いながら納得する。それが大谷翔平という存在の、一番おそろしいところなのかもしれない。
誠也、来年のWBC優勝後には「大谷会」ができるといいね。その時は大谷も「……まあ、勝ったので」と言いながら、ゆで卵5個を注文するはずです。
絶対に。
2026年2月26日・名古屋バンテリンドームでの会見をもとに、過去のエピソードを織り交ぜて執筆しました。


